対談Vol.1

Talk and The person We respect.

株式会社建築設計
アーキフォルム
代表取締役
清水 勝利
株式会社トラスト・ファイブ
企画開発事業部 建築統括課 課長
小坂 茂

【遵法性】完成した瞬間は、当然遵守している。
ただし、そのあと。用途変更の時に、対応できなくなる。
そのために施したことは・・・。

今回、日ごろお世話になっている方とのやりとりを対談としてまとめてみようと思います。テーマは「遵法性」。「何をいまさら」という方もおられるでしょうが、いやいや聞いてみると奥が深い深い。愛さえ感じる、その一部を、ご紹介します。

株式会社建築設計アーキフォルム 清水 勝利様
株式会社 建築設計 アーキフォルム
代表取締役
清水 勝利Katsutoshi Shimizu

一級建築士

1988年福井・楠美建築事務所入社。株式会社建築設計アーキフォルムへの社名変更後、2009年より代表取締役就任。マンション・オフィスビルから店舗、個人住宅まで幅広い設計を手がける。

株式会社トラスト・ファイブ 小坂 茂
株式会社トラスト・ファイブ
企画開発事業部 建築統括課 課長
小坂 茂Shigeru Kosaka

一級建築士 宅地建物取引士

設計事務所、株式会社MDIを経て、2016年に入社。住宅などの設計を手がける。建設の計画から完成まで建設業務をワンストップで担当している。

Session 1 もはや都内に新築はない!だから増改築の知識がないと設計はできない。

  • 小坂 小坂

    第一回目の対談企画として清水さんをお招きしました。お忙しいところ、ありがとうございます。今回は、遵法性についてお聞きしたいと思います。最近でもよく法令順守が話題になりました。このテーマに関して清水さんはどうお考えですか?

  • 清水 清水

    いまや、東京都内23区には"新築"はないといえると思うんですね。
    たとえ建物がなくても、基礎や杭は残っていますよね。
    更地でも、掘ってみるといろいろ出てくる。
    つまり、増改築の知識がないと設計が「できない」わけです。
    諸条件を整理して、危険性をいろいろ想定して組み立てる事ができないといけないですよ。

  • 小坂 小坂

    なるほど、だから法令遵守が大切と清水さんはおっしゃるわけですね。 当社が買う土地も、ほとんど建物がありますしね。
    2018年のファザーランド渋谷の時も、いろいろ課題がありましたね。

  • 清水 清水

    ファザーランド渋谷は二方が道路に面していて、そして高さが違う・・・(笑)
    でも1Fの店舗が2つできる。
    多分、そんないい立地でも、他社だとまず作ってない(開発してない)と思うんですよね。搭状比とかとにかく工期・工費のバランスの問題からリスク回避しただろうと。
    今は撤廃されていますが東京都構造指針の問題でね。

  • 小坂 小坂

    私が初めて見たときも、既存建物の解体が心配でした、とにかく地下の状況がわからない。どこまで隣地と繋がっているかとか。かつ、片方がバス通り。
    これは思ったより大変な工事だ、と。

  • 清水 清水

    最初小坂さんがボリュームを入れて、私が法的チェックをしました。トラスト・ファイブとしては、最大ボリューム建てたい。目的が確立されていたので道筋も判断基準も明確でした。やはり、経験したことだけで判断すると道は開けないと再認識しました。

Session 2 新築した時は問題ない。例えば10年後、
用途変更しようとすると対応できなくなる。

  • 小坂 小坂

    ファザーランド浅草はどういうご感想ですか?
    ホステルという用途でしたから、運営サイドの考え方で大きくプランが変るものでした。お風呂とか導線とか。

  • 清水 清水

    ファザーランド渋谷はオフィスビルだったので、それに比べると調整事項が多かったですね。オペレーター(THINK GREEN PRODUCE社)の意向を取り入れて、法的にOKかどうか、探りながらやりました。浅草でホステルは社会的にも必要ですし、地域貢献の度合いも大きいものでした。

  • 小坂 小坂

    遵法性という点ではどういう視点をお持ちでしたか。
    基本新築なので、そもそも法令を守るのが当然だし、守らないと検査済みが出ない。
    当たり前といえば当たり前なことですが。

  • 清水 清水

    もちろん、新築時点では全く問題がないです。しかし、問題はそのあとなのです。
    10年後、景気の波が来て、ホテルがやむなく撤退する可能性はありますよね。
    この先、例えばオフィスにしたいとき。用途変更できるように新築の段階から汎用性を持たせる設計にしました。

  • 小坂 小坂

    新築ならではの発想ですね。プランにある程度幅を持たせたということですね。
    私の知る限り、そこまで考えて作っている宿泊施設はないと思います。
    具体的にはどういう部分ですか。

  • 清水 清水

    階段、EV、開口部を、オフィスにした場合でも大丈夫なように設計しています。
    今は、カーテンで隠れていますが、使っていない窓があります。
    オーナーさんも安心でしょ。それにトラスト・ファイブさんの売却の時にも相当、セールスポイントになると思いました。

  • 小坂 小坂

    EXITのことまで考えていただきましてありがとうございます。(笑)
    金融機関もその姿勢を評価してるようです。
    このひと工夫、私も相当勉強になりました。

Session 3 例えば予想外の工事遅れが発生した時、いくら言われても「がんばりません」。
それ自体が、グレーだから。

  • 小坂 小坂

    3つ目のファザーランド浅草Ⅱは当初、"路地状"でした。最終的には幸運にも買い増しができ、四角形になりましたが。当初は変形の土地でプランをお願いしました。
    用途はこれもいろいろ法令と向き合わなければならない宿泊施設でした。

  • 清水 清水

    土地形状がL字だったので、まずはプランの作成が大変でした。
    東京都の建築安全条例10条で路地状敷地はホテル、マンションなど特殊建築物はNGですよね。認定をもらうために、検討に検討を重ねました。そこでようやく現状の土地形状でもホテルが建てられるようにしました。

  • 小坂 小坂

    ほんとに、おつかれさまでした。最終的には幸運にも四角形になりました。
    現在工事中(2019年3月現在)ですが、もし、天災があって少し工期が伸びそうになったとき、清水さんは今までどう対処なさっていたんですか。

  • 清水 清水

    予想外の工事遅れが発生した時ですか。
    もちろん各方面と調整して、ゼネコンさんとも話し合って、最大限の提案はします。いくつも打開策を考えると思います。でもいくらデベロッパーから言われても「がんばりません」。
    なぜなら「がんばること」自体がグレーだから、明確にする必要があります。

    少し話は飛びますが、小坂さんは「日本の施工技術は高い」と思っていますか?

  • 小坂 小坂

    技術力は高いと思います。海外からも評価されています。

  • 清水 清水

    でも、本質は低賃金。力仕事でなりたい人がいない。
    だから今の人出不足問題が生まれています。
    実は、日本のゼネコンの仕組みは海外ではあまりなく、CM(コンストラクションマネジメント)によって、サッシュ屋さんとか、内装さんとか直発注なんです

  • 小坂 小坂

    コンプライアンスを語るときに人出不足を抜きにできないということですね。

  • 清水 清水

    そうです。人手不足が施工レベルの低下を招くほうが怖いと思います。
    ゼネコン、サブコンはもとより、古くからやっている設計事務所でもなかなかいい人は取れない。

  • 小坂 小坂

    トラスト・ファイブとの仕事のやり方について、どんな印象をお持ちですか。
    ちょっと、こだわりが強い、普通のものでやり過ごすという社員はあんまりいない気がします。

  • 清水 清水

    任せてくれるところは徹底的に任せてくれる、だからモチベーションにつながっています。けれど、絶対に投げっぱなしにはしない。いつも"並走"してくれているイメージがあります。
    小坂さんも、こだわりがありますしね。

  • 小坂 小坂

    こだわりを持っている社員が多いと思います。
    設立22年、コツコツとやってきました。まだまだ無名で、だれも知らない会社かもしれません。でも、会社の一人一人が遵法性への意識付けは徹底的にやっています。だからここまでやってこれたんでしょう。
    今後とも、ご指導ください。

※対談の内容は、2019年3月のものです