東京都港区東新橋に立つ「電通本社ビル」内の商業施設「カレッタ汐留」に、新しい飲食店街が誕生した。
8月27日にオープンした「汐留横丁」は、「次世代シェア型横丁」を謳うフードホールだ。900㎡のフロア内には265座席が並ぶ。スマホで注文・決済すると、料理が運ばれてくるスタイル。セルフサービスのフードコートとは異なり、テーブルについたまま様々な店舗の料理を楽しむことができる。
入居する飲食店は最大で15店舗。8月27日のオープン後は、居酒屋やイタリアン、まぐろ専門店など8店舗が営業を開始し、残り7店舗は11月までに順次オープンする予定。将来的には、フロア内にある既存の飲食店の料理を提供する構想もあるという。
「シェア型」を掲げる理由は、その出店形態にある。施設内には各店舗のキッチンがあらかじめ整備されており、入居する店舗はそれをレンタルする形で営業する。開店初期費用20万円、家賃は完全歩合制、共益費は各店で按分、しかも1日単位で出店が可能という、店舗側にとってハードルの低い条件としている。
「汐留横丁」を運営するfavy(東京都新宿区、ファビー)は、飲食店を紹介するウェブメディアの運営やモバイルオーダーシステムの開発などを手掛けてきた。「飲食店が簡単に潰れない世界」を目指し、近年では「汐留横丁」のようなシェア型レストランの開発運営にも注力。東京のほか仙台や大分、鹿児島、宮崎など6カ所で常設の施設を運営しており、コロナ禍などで客足の途絶えた飲食店街の再生策としても注目が集まっている。
「カレッタ汐留」内の飲食ニーズも、ビル内にある劇団四季の劇場や、本社を構える電通の稼働状況などによって左右されてきた。コロナ禍で出社率が2割まで下がり、来館者も減ったことで売上げは激減。その後も人出は戻らず、シャッターが閉まったままの店舗が目立っていた。
こうした状況の打開策として、これまではコストをかけた大規模リニューアルを実施する例が多かった。一方のシェア型レストランは、既存の店舗を残したまま、空き店舗のみをフードホール化することが可能なため、コストとリスクを抑えつつ、既存店舗の活性化にもつなげることができる。
favyでは、商業施設だけでなく、オフィスビルの飲食フロアや路面店などへの導入も進めている。