ビル業界トピックス

先月末竣工の「渋谷エメラルドビル」 和のファサードで日本らしい雰囲気演出

テナント半分成約済み 既存ビルの建替え

 先月末に渋谷区宇田川町で、商業ビル「渋谷エメラルドビル」が竣工した。既にテナントの約半分は成約済み。残り半分も早期に埋まる見通しだ。人目を引く外観及び内装のデザインに加えて、日本のビルならではの工夫も施している。

 「渋谷エメラルドビル」は東京メトロ「渋谷」駅徒歩4分、JR「渋谷」駅からは徒歩6分、井の頭通り沿いに位置する商業ビル。規模は地上10階地下1階。延床面積は1551・01㎡。日中から深夜まで人の往来が絶えない繁華街に立地する。オーナーは合同会社のエメラルドビル。設計監理はツチヤタケシ建築事務所(東京都中野区)、施工会社は北野建設(東京都中央区)。仲介会社はシービーアールイー(東京都千代田区)。既存の「エメラルドビル」の建替えプロジェクトとしてスタート。着工前に新型コロナウイルスの感染拡大もあったことから、アフターコロナを見据えた商業ビルの在り方を模索することから始まった。

 そこで注目した点が、建物のファサード。全ての窓が手動開閉可能な「呼吸するガラスファサード」を採用した。商業ビルのプロトタイプともされているガラスカーテンウォールのビルは視覚的に開かれている反面、空調換気といった機械に依存した「閉じた箱」でもある。同ビルでは、アナログであるものの手動で開閉する窓を採用。自然の風を感じながら必要に応じて換気できる、サスティナブルなビルになった。

エントランスアプローチ 鳥居と参道を想起

 また日本建築の意匠をモチーフにした「和のファサード」も特徴。街路に面したエントランスアプローチは、利用者・来館者を向かい入れる「鳥居」と「参道」を想起させるデザインとした。また「薬師寺東塔」の屋根と裳階を参考に、ブロンズメタリックのアルミパネルによる庇の連なりも構築。下から見上げると、アルミパネルがリズミカルに連なるように映る。昨今の新築・築浅ビルではガラスファサードにより、外壁が平らで真っすぐなケースが散見される。これらビルと差別化しながら、日本らしい雰囲気を演出。インバウンドをターゲットにした店舗にも最適だ。

 エメラルドビルの張戸定根社長は「『和のファサード』を採用したことで、渋谷エリアでも希少なビルとなりました。世界中のインバウンドを招き入れる渋谷に建つ、中小規模の商業ビルのモデルケースとも思われます。また1階の階高は5m。各階は3・7mと、天井高も特徴です。豪華な装飾や手の込んだ内装など、フロア内を造りこむテナントには好ましい環境となっています」と語った。

 リーシング対象は主に店舗で、飲食店やサービス型の来店型テナントなどからの反響が多い。電気容量も多く設定。多様なニーズに応えることができる。

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