ビル業界トピックス

AIが内観を作る「デジタルステージング」安価で高質な生成技術が反響増加に寄与

Realty Bank(札幌市中央区)は昨年6月より、不動産関連事業者向けのホームステージングサポートツール「Digital Staging」を提供している。

代表取締役の川上将司氏は大学卒業後、日本の不動産会社に就職。2017年に米国シカゴに本部をおくプロパティマネジメントの不動産資格である「不動産経営管理士CPM」を取得。2021年に満を持してアメリカの不動産会社に転職した。テキサス州で1年2か月ほど働き、アメリカならではの先進的な不動産システムを目の当たりにしたことが、川上氏の会社設立の背中を押した。

川上氏は、「『Digital Staging』は、バーチャル上で部屋の家具をステージングできるサービスです。アメリカの不動産会社は、『他社よりも早く高く売ろう』という意識が高い。他社との差別化の手段として、不動産テックが活用されていました。日本の不動産業界でも同様に、不動産テックの発達が、業界の課題解決につながるのではないかと思い、開発に至りました」と話す。

日本でもバーチャルステージングサービスは浸透しつつある。一方で、課題が多いのも確かだ。その一つが単価。日本ではステージング画像1枚の生成につき、1万円程度の費用が掛かる。ある物件に複数部屋の空室がある場合、募集サイトなどに載せるため、全室の内観を生成しなければならない。しかしその費用負担は決して小さくない。対してアメリカでは、1枚につき35~40ドル。日本円換算で約5000円と半額程度の相場だ。

また、日本のステージングサービスは納品までに3~5日程度かかることが一般的。営業日を考えると、発注から物件掲載まで1週間程度が必要になる。合成技術も自然と言えないものが多く、入居希望者のイメージにより近づける工夫が必要とされていた。

「Digital Staging」はこれらの課題を解決。画像の値段は1枚4950円(税込)。納品は24時間程度で可能。高精度AIにより、合成写真はかなり自然な仕上がりとなっている。

「AIがステージングを生成することで、人件コストがかかりません。作業もスピーディにできます。また、家具を消すこともできるので、まだ入居者がいる物件でもスケルトンの状態に再現できます。ステージングを導入すると、まずはPV数が上がり、次に内覧数が増えます。すると、必然的に成約スピードが上がります。この好循環こそが、『Digital Staging』の大きなメリットです」(川上氏)。

さらに、修正回数は無制限。すべてスマホで完結できる。納期・発注作業の煩雑さの改善にも大きく貢献する。

これらの利点が支持され、提供開始から約1年でユーザー数は700人程。不動産オーナーや管理会社、仲介会社を中心に右肩上がりで利用者が増え続けている。主に住宅物件向けのサービスだが、オフィス向けの引き合いも増えているという。Realty Bankでは、2025年までに4000件の契約を目指す構えだ。

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