ビル業界トピックス

森ビル 「逃げ込める街」を追求 継続的な取り組みで社員の防災意識向上に注力

 森ビル(東京都港区)は「『逃げ出す街』から『逃げ込める街』」への転換を提言し、都市防災の取り組みを進めている。

 大規模ビルにおいて、耐震構造や非常用発電設備といったハード面における災害対策は、今や標準装備となっている。一方で、災害時の運用や社員のオペレーションをはじめとしたソフト面での課題を抱える事業者は少なくない。

 森ビルは、継続的な防災教育を実施している。独自の「防災要員制度」もその一つ。事業エリアである「六本木ヒルズ」、「アークヒルズ」、「虎ノ門ヒルズ」、「麻布台ヒルズ」の4棟を中心とした3・5km圏内に防災社宅等を開設。居住者を防災要員と位置づけて、有事の際の初期活動が迅速にできる体制を整えた。加えて管理事業部社員7名を「六本木ヒルズ」の近隣住宅に入居させて、有事に備え当番制で待機する管理社宅も設けている。

 災害対策室事務局の細田隆事務局長は「当社には現在、240名ほどの防災要員がいます。防災要員には2カ月に1度の座学や実地訓練を義務付けており、実践的な防災力の強化に努めています。もちろん一般社員への防災教育も欠かせません。年2回の社内防災訓練のほかに、3年に一度の救命講習も行っています」と話す。

 社内にとどまらず、ビルの現場でも大規模な防災訓練の取り組みも実施。「六本木ヒルズ」では2003年の開業以降、社員と自治会による共同訓練を実施。心肺蘇生法や煙体験、応急手当など災害時の実践的な動作を身に付けている。ヒルズアリーナという開けた空間で行うことから、地域住民の防災意識向上にも寄与している。

 「『六本木ヒルズ』の場所は開発前、木造住宅などが密集する防災リスクの高いエリアとして知られていました。自発的に防災の勉強会を行うなど、自治会の方々は非常に防災意識が高い。社内としては、『防災の実行性を高めること』を目指している一方で、帰宅困難者の受け入れはビルの特性によって変えていく必要があると考え具体的な検討を進めています。今後は防災要員の人数の見直しなども含めて、さらに防災の精度を高めていきたいと考えています」(細田氏)。

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